今回は、多くのアマチュアが悩むテーマ、「インパクト時の伸び上がり(アーリーエクステンション)」について、永井延宏プロと一緒にこの動画の解説を深掘りしていきます。
永井プロのレッスン哲学は、常に「症状」ではなく「根本原因」に焦点を当てます。この動画で指摘されている伸び上がりのメカニズムは、まさに永井プロが提唱する「逆転の発想」に通じるものがありました。
「頭を上げるな」というアドバイスに疲れた方へ。あなたの体がなぜ伸び上がらざるを得ないのか、その「賢い反応」の裏側に隠された、3つの致命的な根本原因を、永井プロの見解を交えて解説します。
導入:永井プロの視点
――この動画の解説(伸び上がりは「症状」であり「原因」ではない)について、永井プロはどのように感じられましたか?

「まさにその通りです。多くのアマチュアは、伸び上がっているという結果、つまり症状にばかり目がいってしまう。でも、伸び上がりはスイング中の別の問題を解決しようとする『リカバリー動作』なんです。私のレッスンでは症状が現れるのが現在、それに対して過去と未来という全体の流れを整えながら、根本的な原因を見つけ出してソコを潰していきますので、生徒さんはいい方向に行っていると感じます。」 (この動画のオープニング部分の解説を受けて)
原因1:バランスを崩す「間違ったセットアップ」の罠
この動画では、伸び上がりの最初の原因として、アドレス時の「間違った姿勢」、特に重心が不安定になる構えを指摘しています。
アスレチックな構えが引き起こす不安定性
多くのゴルファーが目指す「アスレチックな構え」は、しばしば体重をつま先側にかけてしまいます。重心が不安定になり、脇の下が足の指よりも前に出ると、体は回転中にバランスを保てません。その結果、転倒やシャンクを避けるために、無意識に起き上がって重心をかかと側に戻すという修正を強いられます。
解決策:骨盤後傾で軸を安定させる「オールドマン・ポスチャー」
安定した前傾をキープするための鍵は、上半身の重心を、体のバランスポイントである膝と母指球の上に正しく置くことです。
- 正しい姿勢の感覚: 「オールドマン・ポスチャー」を意識し、骨盤をわずかに後傾させる(お腹を引っ込めるイメージ)ことで、重心を後方に移動させます。
- 永井プロの解説:スイングの正体はクラブとの引っ張り合い

「私はスイングの正体はクラブとの引っ張り合い(遠心力と向心力)と考えていて、多くのアマチュアはクラブに引っ張られ負けてバランスを崩しています。よくフィニッシュでつま先方向にヨロけますよね?逆に最近は世界NO1スコッティ・シェフラーの様に左足を後方に動してクラブとの引っ張り合いに勝つ技術が主流。なのでつま先体重よりは踵体重の方がいいと思います。」
(この動画の正しいセットアップの解説を受けて)
原因2:ボールの行き先を調整する「閉じすぎたクラブフェース」
2つ目の原因は、スイング中にクラブフェースが閉じすぎている(シャット)ことです。
伸び上がりは「左へのミス」を防ぐための本能的な修正
トップでフェースが閉じているアマチュアゴルファーが、そのまま前傾を保って回転すると、ボールは大きく左へ飛んでいきます(フック・チーピン)。
ここで体が本能的に行うのが、手元を浮かせて体を起こし、結果的にフェースを開いて左へのミスを防ぐという修正動作です。伸び上がりが、実は「方向性を守るための本能的な操作」だったというわけです。
解決策:フェース面を安定させる「ニュートラルグリップ」への変更
この問題を解決するための根本的な方法は、フェースを閉じすぎる原因となるグリップを修正することです。
- グリップ修正: 強すぎるストロンググリップをやめ、左手のナックルが2つ半見える程度に握る「ニュートラルグリップ」に変更します。
- 永井プロの解説:無駄な操作を排除する「グリップの真実」

「私がレッスンを始めた頃(約30年前)はトップでフェースが開いてスライスしてしまう人がほとんどでオープンフェースの矯正をずっとやっていた記憶があります。その後、ヘッドの大型化に伴い最近ではフェースがクローズ過ぎるゴルファーが多いと感じます。私のレッスンではフェース面とスイング軌道の関係を整えますが、フェースのミスの原因がグリップに起因する場合はグリップを修正します。」
原因3:シャローに修正するための「スティープなダウンスイング」
3つ目の一般的な原因は、ダウンスイングの始動時にクラブシャフトが「スティープ(急角度)」になりすぎることです。
伸び上がりは、軌道をシャローにする「無意識の修正メカニズム」
スティープな軌道でクラブを下ろし、そのまま前傾姿勢を保って回転すれば、ボールを上から叩きつけるような「カット打ち」になってしまいます。
この動画の解説にある通り、ゴルファーの体は、スティープすぎる軌道を機能的なパスに乗せるために、姿勢を崩して体を起こすことで、クラブパスを水平方向に倒し(シャローにし)、軌道を修正しているのです。
解決策:背中側から下ろす「シャローイング感覚」の習得
スティープな軌道の修正は複雑ですが、その「感覚」を養うためのドリルが効果的です。
- アライメントスティックドリル: アライメントスティックをクラブのシャフトの左側に沿わせるように一緒に握り、トップからダウンスイングを開始するとき、クラブが自分の背中側に倒れる感覚(スティックの先端が自分の前方を指す)で動かします。
- 永井プロの解説:背中側にクラブを預けシャローイングを体感

「スティープになるのは、アドレスの位置に戻そうとする意識のせいだと思います。私のレッスンでは『背中側にクラブを預けたままシャローにアタックする』という感覚を伝えており、この仕組みでは伸び上がるとボールに届かなくなるので必然的に前傾角の維持ができ、骨盤の動きも改善されます。」
根本原因を修正した後に試すべき「前傾キープドリル」
このドリルは、上記3つの根本原因のいずれかを修正し、軸が安定した状態になった後に、物理的なフィードバックを得るために試してください。
- ドリル内容: 右脇の下にアライメントスティックを挟みます。
- 意識: ダウンスイングで体を回転させるとき、スティックの先端が地面を指し続けるように意識します。
- フィードバック: もしあなたが伸び上がれば、スティックは前方を向いてしまいます。正しく前傾姿勢をキープできていれば、スティックは地面を指し続けるでしょう。
Conclusion: 症状と戦うのをやめ、根本原因を修正しよう
永井プロ: 「今回の動画の解説は、まさにゴルフ上達の本質を突いています。伸び上がりは、あなたの体がスイングの別の問題を解決しようとしている結果です。その問題は、アドレス(土台)、フェース(方向性)、軌道(入射角)のいずれかに必ずあります。」
「伸び上がりという症状を無理に抑えようとするのではなく、根本原因を見つけ出して修正することに集中してください。軸を安定させること、フェースと軌道の整合性を高めること。これができれば、体は自然と伸び上がる必要がなくなり、安定したインパクトを迎えられるようになります。」
あなたのスイングに隠れている本当の原因は、この3つのうちどれでしょうか?ぜひ、この動画の解説と永井プロの見解を参考に、あなたのゴルフに新しい一歩を踏み出してください。